特別ワークショップ 『ディズニーランドのすごいところ』レポート2

レポート1からの続きです。 ■ ディズニーランドへの思い入れの強い人を採用しているからか? キャストのモチベーションが高いのは、ディズニーランドというエンタメ産業(=憧れ産業:by ウガワさん)だからこその部分はあると思います。 キャストのトレーニング時に、心構えとして、夢の国での役割を演じることが大切と説明しているそうなのですが、これはストーリー性のある世界観を持つ、ディズニーだからこそできることです。 また、キャストを志望する人の多くは20代前半と思われますが、彼らは小さい頃からディズニーのお話を聞いたり、修学旅行などで行ってみたり、日曜の王様のブランチでの『ディズニーナビ』(2003年1月開始)を見ていたりと、キャストを志す時点で思い入れがあったのは大きいと思います。 (余談ですが、僕がディズニーに思い入れがあまりないのは、小さい頃はディズニーの絵本で育っていなく、30才になるまで関西で過ごしたので王様のブランチを見てなかったりと、これまで接触する機会がなかったためかもしれません) このように思い入れを持ってもらいやすいという面はありますが、ディズニーランドも開業当時は当然、まだ歴史も無く、そこまでブランド化されてはいないので、最初からキャストの質が押し並べて高かったワケではなかったようです。 『ディズニーランドの経済学』によると開業後1年くらいの様子として、キャストの慣れからくる問題を、「ガイド口調や笑顔を見せずにチケットを切る」など事例を挙げて指摘しています。(P.121:陳腐化との戦い) つまり、キャストのホスピタリティの高さは、ディズニーランドへの思い入れの高い人を採用している面もありますが、そのキャストも元お客さんだった人が多いワケです。 そんな彼らの思い入れを生み出すようなクオリティも、最初から完全であったワケではなく、少しずつ継続して、サービスレベルを高めていったからこその結果だと思えます。       ■ キャストたちが意欲的に働き、ホスピタリティを発揮できる、一番の要因は何か? ディズニーランドのストーリー性や、それに対する思い入れもありますが、一番の要因はなんでしょうか? それは、3つの要因があると思います。 ひとつは、マニュアル化が徹底されていることです。 よく「お客さまの立場にたって、考えよ」というような抽象的な表現ではなく、各職場のキャストごとに、実務に沿った具体的な指示になっているようです。 これにより、各キャストは短期間で、キャストを演じられることができます。 ちなみに、このマニュアルは、アメリカのディズニーランドで、最初から成文化されたものがあったのではなく、多くはそれまで暗黙知的だったものを日本に導入する際に、かなりの部分をマニュアル化したそうです。 『ディズニーランドの経済学』(P.74より) さらに、現在では日本で作られたマニュアルを基準として、世界で使われているという話も聞きました。(by カッチュー) もうひとつは、その仕事ぶりを認められる仕組みになっていることだと思います。 『スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート』、『ファイブスタープログラム』など、アルバイトにも評価・表彰制度がしっかりあることです。 『表彰制度』:キャスト特典|東京ディズニーリゾート キャスティングセンター また、『オリジナルイベント』の項目に見られる、社内イベントや社内報(リゾートポスト、リゾートチャンネル)による、働いている人同士の相互理解を促している部分も大きいと思います。     ここまでであれば、マクドナルドでもあることだと思います。 マニュアル化、表彰制度とともに最も大事なもの、それは、『現場スタッフへの権限譲渡、エンパワーメント』の部分です。 具体的事例を見てみましょう。 例えば、塾長やたつ兄、サヨが書いていた、花びらや雨水で絵を描くことは、現場スタッフから生まれたものだそうで、これは各自練習をして、仲間同士でゲストの前で描いても良いかのチェックもあるそうです。 こういったことがちゃんと業務に取り込まれているのは、現場スタッフの判断に任せているからでしょう。(トヨタ流に言えば、カイゼンがアルバイトにも浸透しているとも言える) また、『ディズニーランド流心理学 「人とお金が集まる」からくり』では、キャストが自己責任において、ビッグサンダーマウンテンに車椅子の人を乗せるくだりが紹介されています。(P.215) そのゲストは、何が起きても自分の責任だから乗せてほしいと懇願し、キャストはゲストを乗り場まで背負い、安全を再確認し、出口でゲストを待ちかまえました。 結果的に、ゲストは足が踏ん張れないために、擦り傷を負ってしまうのですが、キャストに大変な感謝をしたそうです。 このことはマニュアル違反となることで、通常であれば、叱責されるところですが、逆に社内報を通じて、その勇気を称えられたそうです。 と、イイ話ダナー、で終わるのではなく、ちょっと考えてみてください。 叱責しなかったこと、この判断だけでも通常、考えられないことですが、その後の社内報での評価の方です。 マニュアル化された組織の上で、マニュアルから逸脱している行為を称えているワケで、今後のことを考えれば(マニュアルって何のため?とか、キャストの自己責任で同様の行為を行い、もっと事故につながることも)、そこまでするのは、ありえないでしょう。 おそらく、ゲストの障害の程度やその他の状況も踏まえた上で紹介されたと思いますが、なぜ、これができたかと言うと、マネジメント層のキャストたちへの信頼があり、同時にキャストたちの方でも、それを理解して、間違った解釈をしないという関係性ができているからこそだと思います。       ■ まとめ 『マニュアル化』・『評価制度』・『権限譲渡』、この3つすべてあることが、ディズニーランドで、キャストたちが意欲的に働き、ホスピタリティを発揮できる理由だと思います。 特に『エンパワーメント、権限譲渡』、言葉にするのは簡単ですが、それを組織に反映していくのは、簡単なことではありません。マニュアルや表彰制度は、一度作れば、形として残りますが、権限譲渡は、その都度判断が求められることですし、持続的に行わなければ組織に浸透しません。 開業当時からの継続的な風土作り、教育制度などのマネジメントが素晴らしいと思います。 そういう意味では僕にとって、ディズニーランドというより、オリエンタルランドがすごいと思えた、特別ワークショップでした。
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